不安な判決

今日の金沢地裁住民訴訟の判決にちょっと驚きました。訴訟内容は「住基ネットはプライバシーを侵害するので違法であり、住基ネットからの個人情報の削除と損害賠償を求める」というもの。
金沢地裁の判決では、日本で初めて「住基ネットは違法である」と認定し、住基ネットからの個人情報の削除を命じました。
金沢地裁は「プライバシーの権利よりも住基ネットの便利さの方が価値が高いと住民に押し付けることはできない」と、事実上の「住民選択制」の容認をした内容と言えます。
確かに、私が実務をしている上で、住基ネットはさほど役に立っていません。正直なところ税金の無駄遣いだと思っています。総務省の進める電子政府、電子自治体という政策は、本来すべての住民が電子政府電子自治体にアクセスできるのが条件での政策であり、私の住む田舎自治体ではますます使い勝手の悪い政策なんですよね。
がしかし、だからと言って今日の判決が歓迎されるものかというとそうではありません。そもそも「個人情報の保護」という意味では住基ネット自体がいまさら問われるべき問題ではないんですよ。従来の住民基本台帳なんかは紙の書類で市役所内の市民課の棚にずらーっと並べて置いてあるだけだったんですから。それから比べたら住基ネットはずいぶん立派なシステムですよ。
今回の訴訟は、近年の個人情報保護法の成立などから見ても「プライバシー保護」というのが近年のブームのようで、私はそのブームに乗って訴訟を起こしただけのように見えるんですよね。同様の訴訟は東京や大阪など各地で現在13の裁判が行われています。今回初めての判決となったわけですが、今日の判決が今後の判決にも影響を与えることは確実でしょう。
で、なにが不安かというと、今年の10月1日に、国勢調査が行われるんですよ。調査員が各家庭を回って、家族構成や職業などを聞いて回るアレです。そうじゃなくてもなかなか住民の協力が得られない国勢調査。もちろん国勢調査は全家庭が必ず調査に回答しなければいけないことになっているのですが、個人情報保護法や今回の住基ネットの住民選択制判決のおかげでどのくらい影響が出てくるのかと考えると今から欝ですよ。ホントに。